20週で終えた命
状況は人それぞれ。
誰も悪くないし、何も悪くはないけどなんでうまくいかないのかと思ってしまう。
昨日の日本生殖医学会の発表が衝撃的で、不妊治療されている方にとって大変な騒ぎになっています。
いつまで休めばいいのか。
そんなこんなで、明日移植予定の方からもキャンセルする連絡をいただきました。
自分の年齢
最後の凍結胚、保管期限は半年後
コロナの終息がわからない状況
子どもに兄弟を作ってあげたい
色んな問題がある中での決断でした。
もうこれで最後にしようと思っていたという方は何名かいらして、それがこういう形で終わろうとは夢にも思いませんでした。
仕方ないけど、残念でなりません。
早く終息して欲しいのはもちろんのこと、ただ不妊治療を休むというのも現実難しい。どうにか治療が続けていけるよう、フォローしていきたいと思っています。
さて。
今日いらした42歳の患者さま。
去年の10月に移植して陽性、そのまますくすく育ってくれていたので安心していました。
年齢的にも染色体異常の確率が気がかりだったので、一応NIPT(新型出生前診断)を受けることに。
※NIPT:妊婦さんの血中に含まれる胎児のDNA断片を分析することで、赤ちゃんの特定の染色体疾患を調べる
疾患は、ダウン症候群・エドワーズ症候群・パト―症候群
検査結果は、21トリソミー・ダウン症。
悩ましい話でした。私が診ている方も何であろうとも産みたい方もいます。これだけ不妊治療してきたことを考えると、次またいつ妊娠できるか分からないし、これが最後のチャンスだと思うからもう何があっても産みたい。
けど、やっぱり現実問題育てられるのか不安。障害がある子を目の前に、平気でいられるのか。生活がどのくらい変わってしまうのか、不安でしかない。そう思うと、産むことを躊躇してしまう。
どちらの選択も正解・不正解はない。
NIPT後、羊水検査まで進み結果は変わらず。
たくさん悩んで、ご主人とも相談して、結局20週でお空に行ってしまいました。とっても元気な男の子でした。
何でこんな辛い決断になるのかと思うけど、それを辛いと思うのは違うんだと。
無責任にもあのまま妊娠継続するのも違うだろうし、でも不安に感じながらずっと妊娠生活を送るのも違う。
こういうことがある度にどうすべきだったかを考えると、答えは出ない。
それでもまた妊活を再開するときが来て、また頑張ろうという姿に真摯に向き合っていかなきゃなと思います。
この方も気にされているのが、同じ周期で採った卵。
同周期の胚は、また同じように染色体異常なんじゃないかと思うと。それはクリニックでも違うと言われたけど、どうもしっくり来ない。だから採卵からスタートしてみようと思う、とのこと。
以前も水頭症で赤ちゃんを亡くされた患者さまも、同周期の胚を移植する気になれず破棄してしまわれたことがありました。関係ないと言われても、私も他の着床前診断の結果を踏まえても同周期の卵の運命は別物だと思う。着床前診断を見てると、同周期であっても卵の染色体の本数正常・以上それぞれだから。そう伝えるものの、そのまま凍結か、あるいは破棄される方が多いです。
卵1個1個は別々の人生を…
関係なくても、問題なくても、患者さまにとってはもう二度と辛い思いをしたくはない。そう思うと、採卵からスタートだと気持ちがまだ、救われるのかもしれません。
早く妊娠できる日が来るよう、いろんな意味で落ち着きますように。