早発閉経からの妊娠
”排卵した気がする…”
まさかのそれが分かることってあるんでしょうか。
ほんの一例ですが、同じような方にとって救われればと思います。
4年前。
早発閉経で悩んでいらした29歳の方が突然妊娠されました。
初潮からまともに月経が来ることはなく、思春期の頃に産婦人科に行かれた経緯がありました。
血液検査をしたところ、当時のことは記憶が曖昧とのこと。でも、妊娠が難しいからその時(妊娠したいと思ったら)が来たらすぐに産婦人科に行くように言われたそうです。
私のとこにいらしたのが、27歳の時でした。
ご結婚されてすぐに近所の婦人科に行ったら、うちでは意味がないから体外受精をやっている病院へ行くよう勧められたとのこと。都内でも有名な不妊治療のクリニックを勧められた患者さまは、行く前になんとなく体質改善してみようと鍼灸にいらっしゃいました。
勧められた病院は薬が多く、患者さまは副作用が怖いということと、もうここに行くしかないのかという不安がおありでした。(早発閉経では有名なクリニックです。)
別の患者さまで、同じ早発閉経だけど自然周期のクリニックで胚盤胞を凍結されている方がいらっしゃったので、一例を挙げてお話ししてみて、まずはそこでやってみよう!というお話になりました。
初めての不妊治療で戸惑いもありましたが、それでも子どもを授かるために必死だったと思います。
さぁクリニックへ!と意気込んだものの…。
スタートが早発閉経なだけに、前途多難でした。
本当に妊娠できるのか。難しい難しいと、医師からずっと言われ続けていた彼女。
その頃ワンちゃんも3匹飼っていたので、私は寂しくない、この子たちがいるもんと仰っていました。内心欲しいけど、心のどこかで難しいんじゃないかと思っていらしたのでしょう。
初診の検査結果を控えていたので載せておきます。
月経開始3日目
FSH(卵胞刺激ホルモン) 98
E2(エストラジオール) <10
その後も薬を飲もうが注射を打とうが何をしようが、全く数値は変わりませんでした。
(FSHが150近くなった時はさすがに言葉が出ず…)
月経3日目だと、クリニックにもよりますがFSHは10あたりだと◎。
FSHの数値が高いということは、それだけホルモンを出さないと育たないということ。
しばらくして…、4年前の年末。
この時もクリニックで採血をし、やはりいつも通りでした。
ちょうどクリスマス過ぎたあたり位だと思います。
今年の年末年始は、”ニューヨークのタイムズスクエアでカウントダウンするんです!”
と、楽しそうにお話されていました。
ニューヨークに旅立つ2日前。
やはりクリニックでの採血結果は変動がなく、卵胞も見えていませんでした。
無事に年を越し、お正月を明けまたクリニックへ。
やはり何も変動なし。
1月の成人式あたり位から、やたらと胃腸の調子が悪く食事がとれない状況になっていました。
それも2週間が経過し、私もなんとなくですが…
”なんか妊娠してる気がするけど、気のせいか…”
まさかとは思いましたが、気になったので。
「まさか妊娠してるとか、ないよね?」
「ないですよー!あ。でもニューヨークにいた時に太ももに急に紛瘤(皮膚上に本来剥がれるはずの角質と皮脂が袋状になっているもの)ができたんですよ。その瞬間、なんか排卵する気がして(タイミングを)とったんです。でもまさか…」
帰り道に妊娠検査薬を購入していただき、ご自宅にて検査。
まさかの陽性でした。
排卵すると思った日の2日前は、クリニックで卵胞がないことを確認したのにも関わらず、
どこからでてきたんだろうと、不思議でした。
ずっとそんなドラマみたいなお話に、今もふと思い出すことがあります。
”早発閉経で悩んでいる人がいたら、先生相談に乗ってあげてくださいね。”
臨月前にそう仰られ、本当にここまで来れたことが嬉しかったのを覚えています。
多くの体外受精をされている患者さまを診ていて、不思議なことがたまにあります。
いつもその度に、人間には分からないものがあるんだろうと思うようになりました。
教科書通り、セオリー通りにはいかない。
子どもを授かるって、大部分が神秘的で、確定的な材料は少しでいいのかもしれません。
治療をやめようか悩んでいる方、続けてても意味がないのかと思っていらっしゃる方、
色んなお悩みがあるかと思います。
今やれることを、とにかく全てやり切るしかないです。
不思議な扉が開くことは、あり得るのかもしれないです。
たくさんの方に、奇跡が起きるといいな。