新たな不妊治療の技法

5月20日に不妊治療の新しい治療法についての論文が発表されました。

 

受精卵の膜除去で2人妊娠

鳥取県米子市にある「ミオ・ファティリティ・クリニック」の見尾先生方は、受精卵を取り囲んでいる透明帯を取り除いて培養し、受精卵(胚)を移植するという手法により妊娠されたという論文が発表されました。

透明帯??

卵子を包んでいる透明な膜のことを指します。透明帯の役割として、卵子が成長していく過程で必要な栄養素を取り込む役割を担ったり、卵管で受精した際に子宮内に移送しやすいように保ったり、受精した際に他に精子が入ってこないように(多精子受精)透明帯が硬く変性したり、受精→分割中はバラバラになりやすいのを防ぐためにひとまとめにしている(みかんのネット的な)…そんな役割を持っています。

ひとまとめに…

 

透明帯というと、胚盤胞移植の際によく聞く透明帯除去=”アシステッドハッチング”をご存知の方は多いかと思います。アシステッドハッチング後に移植することで、着床をよりしやすい状況にもっていけます。

実際自然下で卵子と精子が受精し分割、胚盤胞まで到達し着床の前にハッチング(孵化)する訳ですが、当然分からないし見えません。

ちゃんと透明帯が破れているかどうか分からない、これも不妊の原因の一つと考えられています。

あとは、実際体外受精した際に分かることですが、いざ胚盤胞になりそのまま戻すとやっぱり着床しないなんてこともよくある話です。着床しない要因もたくさんありますが、重複しますがハッチングできないパターンが多いのではと考えられます。年齢によって透明帯が厚くなる・硬くなるなんてことも言われているので、クリニックの方針によってはアシステッドハッチングすることがマストなところもあります。(透明帯の肥厚や硬化は、年齢要素が強いそうですが、それもあまり関係ないという見解もあるようです。)

とまぁ、アシステッドハッチングだけでも素晴らしい方法ですが、それを受精卵の初期の段階で透明帯を取ってしまうというのは高度な技術と経験が要になってくるかと思われます。

透明帯と受精卵の間に、繋がっている糸が見られる部分がありそこから分割していく最中でフラグメントが発生しやすいことが分かっているそうです。このフラグメントがあると、胚の分割に大きく影響する部分があり、分かりやすく言うとグレードが下がります。そして胚盤胞到達率も下がるということになります。

なので、もうはじめから透明帯を除去しておけば糸の存在はなくなり、胚盤胞に到達しやすくなるというもの。

 

胚盤胞手前で分割がストップした…

こういうお話は本当に多いものです。と、考えるとなかなか胚盤胞にならない方や明らかにグレードが低くフラグメントが目立つものは初期に透明帯を除去することで可能かもしれません。

今後どこのクリニックでもできるようになれば、妊娠できる方も増えるんじゃないかなと思います。

 

引用:ミオ・ファティリティ・クリニック 見尾保幸先生 受精卵の膜除去で2人妊娠 より

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