停留精巣の弊害
男性不妊
と一口に言っても、理由は様々です。
男性でないとあまり耳にしないお話ですが、
”停留精巣(ていりゅうせいそう)”
通常陰嚢(ふくろの部分)の中に精巣(精子を作る部分)がありますが、精巣が陰嚢の中に降りてきていない状態のことをいいます。ただ新生児期はまだでも、生後6ヶ月や1歳ごろには降りてきている子もいるので心配しすぎもよくないです。ですがそれ以降になると、妊孕性(妊娠のしやすさみたいなもの)がだんだん低下していくので早い段階で手術に踏み切るケースが多いです。
今いらしている患者さまご夫婦がこれが原因で、なかなか妊娠しないわけです。
女性側に問題がなかったこともあり、とりあえずタイミングから見ていたのですが、とはいえお二人のご年齢は42歳。決して余裕があるかというとそうではありません。なのでとりあえずタイミングを…(なかなかクリニックに行くのがハードルが高かったようで)というところでした。。
3周期経ったあたりにまず奥様がクリニックで一般不妊検査をされ、ご年齢から考えるとAMHも3以上あり、FSHもLHも全て基準内なので、とりあえずクリア。年齢年齢とだけ言われたそうで凹みはしましたけどね…。
次、ご主人さまの検査。ここがまぁ大きな落とし穴でした。よくはないけど、ものすごく悪くはない。自然妊娠が絶対的にダメな訳じゃないからこのまま様子見することにしたのです。
私もこの時点ではそこまで疑ってはいませんでしたが…。
そして、6周期過ぎたところでお二人を何とか説得し、とりあえず1回体外受精するよう促してみました。
そもそも受精するのか、分割するのか、胚盤胞なるのか、着床するのか…どこまでいけるのかが分からないので試してみたいというのが本音でした。
いざ体外受精を始めたら、奥様は問題なく卵が採れた。(自然周期のクリニックでも3個くらい採れたので優秀です)
なんとなくな不安が当たったといえばそうなのですが…
採卵1回目:3個 → 2個(ふりかけ)/ 1個(ICSI) → 1個受精(ICSI) → 2日目胚凍結
採卵2回目:2個 → 2個(ICSI) → 受精せず
採卵3回目:4個 → 4個(ICSI) → 受精せず
採卵4回目:2個 → 2個(ICSI) → 1個受精も分割ストップ
採れてるのに受精率が低い。(11個中2個 / 18%)
うーん。何これと思ったので、まずはご主人さまに話を聞いてもらいました。
ご本人よりは、小さい時の話だからお母さんに聞くよう伝えました。
”昔、停留精巣の手術をした。” という解答。
子供の頃のことだから、本人は覚えていないですね…
そのまま男性不妊専門クリニックにて検査に行って頂きました。
先生も、検査結果が出てからとは言いつつも、今のクリニックで治療は難しいと思うとのこと。
結果は1週間後ですが、無精子ではないにしても、良好精子がどのくらいいるのか。あとは治療に際して、これから方針を決めていかなければなりません。どちらにしても、結果次第で大きく変わるような気がします。
ご主人さま、多くの男性にとってはかなりのダメージです。
突き詰めることが正しいようで、簡単に傷つけてしまうことになる。
伝え方も難しく、クリニックに行くのもためらう方も多いです。
実は女性以上に男性の方が、このシビアな現実を受け入れるのに時間がかかるものなのです。
不妊治療はそもそも女性の方が辛いですが、メンタルは女性の方が強い。
男性のケアをしっかりしていかないと…と、思う今日この頃です。
もうちょっと書きたかったものがあるので、それは次回に回します。